絵空事

りっぱなことだが,実現が困難であること.絵に描いた餅.

私は電機会社の研究所にいる.私の職場では,主に製作所の研究依頼をひきうけることでご飯を食べている.はっきりいって,その依頼料はとんでもなく高い.それは我々の給料が高いわけでも,誰かがマージンをとっているわけでもなく,所の固定資産税がかなりの割合を占めている.あとは間接部門様の人件費である.いくらとるかなんてのは,私が決めるんじゃなくて,経理がきめるのである.なのに,頼んでくる方は担当者の私に「こんだけ金はらってんだから,たいそうすごい研究をしてくれんだろうねえ!」といわんばかりである.最初に仕事を引き受けるときは,必ず,その製品の説明を受けるまで,当然ながら,その製品については全く知識がない.なのに,製作所は当然知っているもの,当然,そのトラブルは解決してくれるものと思っている.そんなん,知るか!うちの親もその口である.「テレビがこわれたんやけど,なおして」ってそんなもんなおせるか!「あんた,電機会社につとめてんのに,そんなこともできんの?」そういえば,高知市役所のローカルルールをつきつけられて,そんなもの知らないといったら「あんた,大学まで出て,そんなこともしらんの?」といわれた.

1000歩譲って,大学で,高知市役所のローカルルールを習ったとしよう.しかし,大学までに習ったことを全て覚えてばっちりマスターしている人間というのは世界中探してもいないはずである.ニュースステーションのキャスターがよく,理系の人間をとりあげて,「数学の難しい式まで解くようなおえらい方がこんな社会常識も知らない」とばかにするが,理系の人間は理系がたまたま文系よりマシなだけで,この世に全て網羅するスーパーな人間というのはそういないものだ.

話がそれたが,こうしておけば,絶対こうという理想はまず,成立しない.我々はただ,理想に近づくべく,努力し,そして,祈る.私たちはベストを尽くす.あきらめるのは良くないが,無理なことは無理だし,無茶は無茶.その辺を理解してほしい.